Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おおおかえちぜん

大岡越前

吉川 英治

Lesen Sie 大岡越前 (おおおかえちぜん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 218.436 Zeichen · 437 Bildschirme

Aozora Bunko

捨て駕籠

葛、くま笹、萩すすきなど、絡むもの、阻めるものを、踏みしだいて、かの女は、盲目的に、駈け下りて行こうとした。けれど、何を見たのか、ギクとして、お袖は急に足をすくめてしまった。そして傍らの榛の木の下へ、よろめくように身を凭せた。

ふと、お袖の見たあいての女性も、祠の横の大きな木の幹に、半ば、すがたを隠して、じっと、射るような眼をしているのであった。

「?」

両女は、息をつめて、黙しきった。眸と眸とは、曼珠沙華のように、燃えあった。

「そなたは、どこの、誰ですか。……そして、どこへ行こうとなさるんですか」

やがてその女性は、しずかに、――けれど底には女性特有のきびしい針をふくんだふるえ声で、こう咎めた。それはお縫であった。

捨て駕籠

水と火だった。

お袖は、下町ことばの、つよい響きと、竹を割るような感情で、反撥した。

「大きなお世話、どこへ行こうと、わたしの勝手でしょ」

「そうは、ゆきませぬ」

「なぜさ」

「ここは、お庭外でも、大岡家の地内です。ひとのやしきへ、たれに断って」

「市十郎さんに訊くがいい。市十郎さんのいる所へなら、庭はおろかお部屋へも、わたしは上がって行きますよ。