Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠5
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠5 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.120 Zeichen · 516 Bildschirme
懐ろへ入れて来たあの女文字の手紙を取り出して読み返してみると、舌たるいような言葉で、ぜひぜひ今宵のおいでをお待ち申し上げますというような文言であります。女の名は東雲とあって、宛名は片柳様となっていました。片柳の名は、兵馬が好んで用うる変名であり、東雲というのは、吉原のなにがし楼かにいる遊女の源氏名に違いない。お松はそれが悲しくもなり、腹立たしくもなって、その手紙を引裂いてやろうかと思いました。
その遊女も憎らしいけれど、兵馬さんほどの人が、どうしてまたそんな狐のような女に、脆くも溺れるようになったのか、あの人の心に天魔が魅入ったと思うよりほかはなく、それが口惜しくて口惜しくてなりません。といって、よく考えてみれば、こうして自分というものがお傍におりながら、そんな仇し女に兵馬さんの心が移るようにしたのは、やはり自分が足りないからだと思うと、どうも残念でたまりません。どうかして、再び兵馬さんの心を、その女から取り戻さなければならないが、あちらは人を誑すことを商売にしている人。その腕にかけては、とても太刀打ちのできないわたしであるかと思うと、お松は曾て知らなかった嫉ましさに、身悶えをさえするのでありました。