Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠5
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠5 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.120 Zeichen · 516 Bildschirme
「馬鹿野郎」
たまり兼ねた宇治山田の米友は、提灯をさしおいて帯を解きにかかりました。
それから両国橋の上へ数多の提灯が集まったのは、久しい後のことではありません。
それをよそにして、矢の倉の河岸、本多隠岐守の中屋敷の塀の外に立っているのは、例の頭巾を被った机竜之助であります。机竜之助は竹の杖をついてその塀の下に立っていました。ここから見れば、両国橋の側面は、その全体を見ることもできるし、橋の上の人の提灯も、橋の下の舟の提灯も、絵に描いたように見えるけれども、それを眺めているのではありません。
暫くこうして塀の際に立っていた竜之助は、息をついているのであります。隠岐守の屋敷の隣は一橋殿で、その向うは牧野越中守の中屋敷、つづいて大岡、酒井、松平因幡守等の屋敷、それから新大橋であります。
ここへ来て立っている竜之助は、血に渇いていました。たった今は両国橋の上で、斬って捨つべかりし人を斬り損ないました。そこにはたしかに邪魔物があった、その邪魔物は人でなくて動物でありました。その動物はもちろん犬であります。
その犬が……竜之助がここへ来ても、なお不審に思うのはその犬が、猛然としてその主人らしいのを防いでいたけれど、しかも自分に向って、なんらかの親しみがなかった犬とは思われないことであります。