Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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やまびこおとめ

山彦乙女

山本 周五郎

Lesen Sie 山彦乙女 (やまびこおとめ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 126.360 Zeichen · 251 Bildschirme

Aozora Bunko

「むりにも来るよ、こんどは松室もつれてね、ひとつ松茸の汁で栗飯でも食わせて貰おう」

気持の沈む日が続いた。

雨はいっときもやまないので、外へ出ることもできず、村野が相手では、話のたねもなかった。そのうえ、心中したなをのことが、いつまでも頭にしみついていて、ふとすると、眉をしかめるほど、心の痛むことがあった。

あの日、なをは陽気で、嬉しそうで、人が変ったようにはしゃいでいた。半之助に問いかけられて、男のことを話して、

――あらごめんなさい。

手放しでのろけたりして、などと云って赤くなった。いかにも幸福そうであったが、いまから思い返すと、それは死ぬ覚悟をきめた者の、絶望の仮面であったのだ。

「――可哀そうに」

半之助は幾たびも、そっと、こう呟いた。

六月の集まりのときに、思いつめたような顔つきで、相談したいことがある、と云った。あのときすでに、亭主の出獄することが、わかっていたのであろう。だが、やはり云いだすことができなかった。病気で寝たきりの父、四人の弟や妹、半之助には夢にも思い及ばなかったが、自分の子もあったという。母が女の身で人夫をし、なをの稼ぎと合わせて、かつかつの暮しをしていた。