Japanische Klassiker mit Furigana
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やまびこおとめ
山彦乙女
山本 周五郎
Lesen Sie 山彦乙女 (やまびこおとめ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 126.360 Zeichen · 251 Bildschirme
そこは鳥居峠という、古戦場に近いし、里へおりるにも便利である。まちがっても、たけ沢から南へはいってはいけない、そこでは決して他国者は住めないから。と、繰り返し念を押した。だが半之助は、文造の禁じたほうの山へ、沢づたいに、はいって来たのであった。
地図で見ると、いま半之助のいる位置は、甘利山の東面の、ほぼ七合目に当っていた。
頂上ちかくまで、きれこんだ、三つの、傾斜の急な渓谷がある。そこから落ちる水が合流し、甘利沢となって、釜無川へ注ぐのであるが、その三つの渓谷の、いちばん北がわの、森の中に、彼は居どころを定めた。
勾配の急な地勢で、二つの山襞に挾まれているから、森の幅はあまり広くはないし、二百歩も下ると、落葉樹の疎林地帯になる。そこは少し狭いけれども、岩穴があって、荷物や食糧も置けるし、彼一人が寝起きをするには、てごろであった。冬季になったら、入口に少しくふうをすれば、寒さも充分に防げるようである。
三月に此処へはいってから、彼は殆んど、そこを動かずにいた。
土地の者に発見されたら、――単に二年か三年、心身を鍛えるために、山ごもりをしている。と云うつもりでいるが、そのためにも、誰かと知りあい、或る程度うちとけるまでは、むやみに出あるいたりして、かれらに疑われるようなことは、避けなければならない、と考えた