Japanische Klassiker mit Furigana
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やまびこおとめ
山彦乙女
山本 周五郎
Lesen Sie 山彦乙女 (やまびこおとめ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 126.360 Zeichen · 251 Bildschirme
それはまだ慥かではない、これ以上にはなにも始まらないかもしれない、やがて解放感もなくなって、再び倦怠や徒労感にとりつかれるかもしれない。だが、彼はいまこう考えることができる。
――人間はいかに多くの経験をし、その経験を積みあげても、それで自分を肯定したり、満足することはできない。
――現在ある状態のなかで、自分の望ましい生きかたをし、そのなかに意義をみいだしてゆく、というほかに生きかたはない。
すでに、江戸のことは迥かに遠かった。村田や青山や、その他の多くの知人は、(柳沢系に代った)新しい勢力のなかで、それぞれの席を占めているであろう。谷町の安倍父子はどうなったか、物欲の固まりのような冲左衛門は、八百石から千二百石の大番に出世をし、なお柳沢一派の尾について、その子の又五郎と共に奔命これ努めた。その結果がどうなったかはわからない、もしもあの変動をうまく躱したとしたら、いまごろは新しい情勢のなかで、またもや忙しく奔走し、心を苛立て、怒ったり憎んだりしているにちがいない。
――あの佐枝という娘は、どうしているか、
その父や兄にふさわしく、派手好きで、驕った、あの娘の姿は、思いだそうとしても、もうまったく眼にはうかんでこなかった。