Japanische Klassiker mit Furigana
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あるたんぼうきしゃのはなし
平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕
平林 初之輔
Lesen Sie 平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕 (あるたんぼうきしゃのはなし) von 平林 初之輔 (ひらばやしはつのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 113.247 Zeichen · 229 Bildschirme
二
今でもよくおぼえているが、私はその時には、ちょっとした物音にでもびくりとした。まるで似もつかぬ自転車に乗った小僧にうしろから追いぬかれても、もしや妻ではないかと思って、私の心臓はばたばたと調子を狂わした。どんなことがあっても、私は、今朝外出することを、絶対に妻に知られたくなかったのだ。
もちろん、妻が、渋谷の伯母の家へ行くといって出かけてから、もうたっぷり二十分はたっているのだから、普通ならそう用心する必要はなかったのだ。しかし、世の中のことはそんなに普通にばかりきちんきちん運んでゆくものとは限らんのだから、私は、私のやりかたをあまり用心ぶか過ぎたなどと今でも思ってはいない。彼女が何か忘れ物でもして途中から引き返してくるおそれは十分にあるし、途中で買物でもして、二十分やそこら費やしていることは女には普通にあることであるから。それに、妻には見つからなくても、苟も私の顔を見知っている人間には誰にあってもいけなかったのだ。後になってから、いつか発覚するにきまっているから。
二
どうして、それほど今朝の外出を秘密にしておく必要があったかを合点して貰うためには、是が非でも、少し以前からのいきさつを説明しなければならぬのだが、それは、今の私には、ほとんど我慢のできないほど面倒な仕事であるし、読者にも退屈だろうと思うが