Japanische Klassiker mit Furigana
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あるたんぼうきしゃのはなし
平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕
平林 初之輔
Lesen Sie 平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕 (あるたんぼうきしゃのはなし) von 平林 初之輔 (ひらばやしはつのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 113.247 Zeichen · 229 Bildschirme
二
私は、あたりにいる動物、たとえば熊のようにすたすた歩き出した。そして、小鳥のように鋭敏な視力をもって、熱心にあるものを探しはじめた。出口の方へ向かって帰ってゆく群衆とは逆の方向へ、何か忘れ物でも取りにゆくような、はっきりした目的意識をもって私は歩いて行った。
二
動物園の入口から、右手の方へ進んでゆくと、鸚鵡や小鳥の檻があって、その先に「閑々亭」という額をかけた、茶室めいた四阿が一軒たっている。この小家の由緒来歴は私は何も知らぬ。ことによると、幕府時代には、動物園の敷地は、どこかの大名の屋敷であって、その屋敷に付属していた茶室がそのまま保存されているのかも知れぬ。何にしてもそれは古色蒼然として埃にまみれている。秋から冬にかけては、縁側へ落ち葉が散りしいたのが幾日も掃かずにそのままになっていることがある。
この閑々亭の前をとおって進んで行くと、だらだら坂になって、坂の終わりに一つの橋があり、橋を渡るとちょっとした広場があって、正面に象の小舎があり、左手に茶店があり、右手の岡の上にライオンや虎や豹のいる所がある。この橋は幅三間位もある相当広い橋で、下は石畳を敷きつめた水路になっている。