Japanische Klassiker mit Furigana
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あるたんぼうきしゃのはなし
平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕
平林 初之輔
Lesen Sie 平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕 (あるたんぼうきしゃのはなし) von 平林 初之輔 (ひらばやしはつのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 113.247 Zeichen · 229 Bildschirme
四
それに、これは最も根本的な点だが、あの女がみな子であることは有り得ない。断じて有り得ない――。
四
時間が刻々にたってゆくので、私は、こんな調子でだらだら電車の中のことなどを書いているわけにはゆかない。
それに、電車が桜木町でとまった時、私の疑いは確定的になってきたのでもうかく必要もないのだ。私は、彼女が降りる時、ちらりとその横顔を見たのだ。無論それは妻のみな子であった。顔色は土のように蒼ざめて、非常に心配事でもある様子で、わざとそういう様子をしているのかも知れぬが、誰か人を監視しているような風はちっとも見えなかった。自分の心配だけでせいいっぱいだという風だった。
いったい世の中に起こる千差万別のすべての事柄は、よく考えてみればわかる事柄、少なくもわかり得る事柄と、いくら考えてもわかりっこのない事柄との二つに大別することができる。そして、みな子の今の行動のごときは、後者の典型的なものだ。私はもうからから笑い出したくなった。そして、からからとではなかったが、ほんとうに少し笑った。無論、彼女がどこへ行ったか、まだ私のあとを尾行ているかというようなことはいっさい気にかけなかった。