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Japanische Klassiker mit Furigana

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あるたんぼうきしゃのはなし

平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕

平林 初之輔

Lesen Sie 平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕 (あるたんぼうきしゃのはなし) von 平林 初之輔 (ひらばやしはつのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 113.247 Zeichen · 229 Bildschirme

Aozora Bunko

二

もっとも妾はただ運がよかっただけで、そのことに気づいたのも何も妾の眼が人並みすぐれて高かったというのじゃないかも知れませんけれど。

あの人は平素からあまり人に会わなかったし、会っても不愛想でまるで相手をうるさがっているような顔つきをして(実際はそうじゃなかったのですけれど)碌々口もきかなかったので、尋常一様の手段では、誰だってあの人に近づくわけにはゆかなかったのです。それで、あの人にどんなに美しい性格があったとしても、サハラ砂漠のまん中にダイヤモンドが落ちていると同じで、奇跡的な幸運でそのそばを通りあわせた人にだけしか、それはわかりっこはなかったのです。

その幸運が妾にめぐまれたというだけなんですわね。あとではそれがひどい不幸になったのですけれど。

二

四月のはじめでした。帝国ホテルで菅井博士の帰朝歓迎会があったでしょう。デンマークの農村を研究してきたとかで、あの頃、帰朝土産の談話が方々の新聞に出ていましたわね。

妾は博士の奥さんと少し知り合いだったせいか招待状を頂いたので、その歓迎会へ出席してみたのです。行ってみると女なんか一人も来ていないので、すぐに後悔したんですが、いまさら帰るわけにも行かないので、窮屈な思いをして、やっと食堂へはいると一番はしの卓に腰をかけました。