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Japanische Klassiker mit Furigana

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あるたんぼうきしゃのはなし

平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕

平林 初之輔

Lesen Sie 平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕 (あるたんぼうきしゃのはなし) von 平林 初之輔 (ひらばやしはつのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 113.247 Zeichen · 229 Bildschirme

Aozora Bunko

三

そうすれば二人は、広い東京のことですからそれっきり、相手の住み場所も名前も知るよすががなくて、この日のたった二時間の交際が、後にも先にも、最初にして最後のものになっていたでしょうから。

妾はタクシーを降りた瞬間から、すぐにあの人のあとを追いかけてゆきたい欲望をおさえるのに瘠せるような思いをしました。

三

妾はここで少し弁解をしておかねばなりません。それは妾自身のためにも必要ですが、何よりも、もうこの世からいなくなって永久に弁解することのできなくなったあの人のために必要なんです。あの人の名誉のために必要なんです。もっともあの人は名誉なんてものはうるさがっていたんですけれど。

というのは、あの人と妾とが、こんな風に唐突に知りあうようになって、しかし互いの性質も境遇も知るまもなく、いきなり狂いじみた恋人同士になった過程について、世間の人は、この上なく妾たちを軽蔑し、それは、妾たちが、そうした不しだらな恋愛の常習者だからだときめてしまうにきまっていると思うからなんです。妾だって、第三者からこういう話をきいたら、そう考えたにちがいありませんからね。

しかし、妾は、妾の心の中に今でも生きているあの人の魂をかけてちかいますが、あの人は決してそういう人でなかったのです。