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Japanische Klassiker mit Furigana

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あるたんぼうきしゃのはなし

平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕

平林 初之輔

Lesen Sie 平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕 (あるたんぼうきしゃのはなし) von 平林 初之輔 (ひらばやしはつのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 113.247 Zeichen · 229 Bildschirme

Aozora Bunko

三

私は、雪を払い落として位牌の文字を読んだ。

『天涯孤独信士』

裏には、「俗名船井三郎、享年三十六歳云々」としてあった。

私はその晩、村の誰にも見られずに、文字通り墓穴から抜け出した亡者のように、夜汽車で東京へ向けてたった。

三

私はこの通り生きている。だが、すべての事情は私が死んだことを証明している。この世の中に、私の生きていることを証明する手段は、私が自分でその筋へ名乗り出る以外にない。否、それとてもたしかな手段とは言えぬ。村の人は二十年も前の私を忘れているらしいから、ただ口頭の証言だけで信じてくれるかどうか疑問だ。しかし私は、そんな面倒なことをしてまで私の生きていることを証明する必要があるだろうか? 私の生きていることによって爪の垢ほどでも私は利益を期待し得ただろうか? むしろ私は、誰かのいたずらか知らぬが、私を偶然にもこんな奇妙な位置においてくれたことを感謝したくらいだ。

私は東京へ帰ると急に立候補断念を声明した。そして誰が何ときいても、ただ一身上の都合一点張りで押しとおしてしまった。これは無産党の闘士として、たしかによい態度とは言えぬ。だが、戸籍のない人間には立候補の資格はないし、代議士になるよりも死んだ人間として生きてゆく方が私には遥かに誘惑的だった。