Japanische Klassiker mit Furigana
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あるたんぼうきしゃのはなし
平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕
平林 初之輔
Lesen Sie 平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕 (あるたんぼうきしゃのはなし) von 平林 初之輔 (ひらばやしはつのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 113.247 Zeichen · 229 Bildschirme
実に突然にあの人はこう言いました。会の席で妾のコップにシトロンでなくビールがついであったのを思い出したにちがいありません。
「ええ、いくらか」妾はつい半年ほど前から酒をのむようになったことを、別に女だからって恥じてはいなかったのですが、あの人に、真面目でそう指摘されたのには困ってしまいましたが、かくすわけにもゆかないので、正直に答えたのです。
「この先にいい酒をのませるバーがあるんですが、ちょっと寄ってごらんになりませんか?」
「そうね、では――」
あの人も非常識なら、私も非常識だったのです。はじめて会った男と女とが、二十分位しかたたないうちにこんな話をし出すなんて。でも、今だから告白しますが、男女というものは長くつきあっているうちに愛しあうようになるなんてことは金輪際ないと妾は思うんです。ちょっと会った瞬間に、もう運命は決定してしまうものなんです。少なくもあの人と私との場合はそうでした。妾は何となく一分間でも長くあの人と一しょにいたいような気がしていましたし、あの人も、あとから聞いたことですが、ただ妾と別れるのをしばらくでものばすために、あんなことを言い出したんだそうです。