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Japanische Klassiker mit Furigana

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あるたんぼうきしゃのはなし

平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕

平林 初之輔

Lesen Sie 平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕 (あるたんぼうきしゃのはなし) von 平林 初之輔 (ひらばやしはつのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 113.247 Zeichen · 229 Bildschirme

Aozora Bunko

そんなことを思うとどうも気のせいか人の通るような跫音が聞こえてくる。そして不意に咳がこみあげてくるのだ。

駒下駄を穿いているので、幸いにも水は足うらまではとどかないのであるが、腰をかけるわけにはゆかない。じっと立っていると、身体の中へ棒をとおされたように疲れてくる。渇をいやすために、というよりもむしろ、ひどい空腹を補うために私は時々しゃがんで下を流れている水で唇をぬらした。その度に全身の骨がめりめりと鳴って、どこかの骨がぽきんと折れてしまいそうな気がする。

下宿へ帰って、意地悪そうなお内儀さんの眼を見るよりもましだと思って、不意に考えついて選んだこの棲み家も、とうてい長くは辛抱できないことがすぐにわかってきた。どんな垢じみた布団でもよい。いや布団などはなくとも畳でもよい。畳もなければ板の間でもかまわぬ。板の間がなければ、せめて乾いた地面でもよい。しばらくその上に大の字になって、寝ころぶことができたら、明朝は殺されてもかまわない、と私は思った。私は不眠のために夜の明けるまで床の中に輾転していたことを思い出す。だが不眠なんてことは、今の苦しさに比べると極楽浄土だ。