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Japanische Klassiker mit Furigana

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あるたんぼうきしゃのはなし

平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕

平林 初之輔

Lesen Sie 平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕 (あるたんぼうきしゃのはなし) von 平林 初之輔 (ひらばやしはつのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 113.247 Zeichen · 229 Bildschirme

Aozora Bunko

そして二三十分もの間じっとしていた。やがてしずかな薄暗がりの中に、さくさくと土を踏んで歩く男の跫音が聞こえたが、それもだんだん遠くへ消えて行って、あとは時々妙な鳥の啼声がするばかりである。

「実にうまくゆきましたよ」と三十分もの沈黙の後に彼は低声で言った。「もししくじったら、鞄を奪いとって、あの裏切者が上がってくるところを、下の石畳の上へ突き落としてやる決心をしていたんですが、そんなことをする必要がなくて助かりました。こんな処では声をたてられるのが一番禁物ですからね」

「鞄はどうしたのです。取り返せましたか?」と私は彼が何ももってこなかった様子を見ていたので、不審に思ってたずねた。

「鞄は必要はないのです。中味をぬいてしまえばね。あの鞄の中には我々同志の名簿がはいっていたんで、あれをもって行かれた日には我々は一網打尽に一人のこらず検挙られてしまうところだったのです」と言いながら彼は懐から小さい手帳をとり出した。「これですよ、僕は他の手帳をもって行って、あの男が鞄を橋の上へあげた間に、そっとすりかえてきたのです。その手帳には、いい加減な名前を書いておいてやりました。