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Japanische Klassiker mit Furigana

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あるたんぼうきしゃのはなし

平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕

平林 初之輔

Lesen Sie 平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕 (あるたんぼうきしゃのはなし) von 平林 初之輔 (ひらばやしはつのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 113.247 Zeichen · 229 Bildschirme

Aozora Bunko

須田町のあたりでこの客人をおろしてやってくれたまえ」しばらくしてから彼は運転手に向かってこんなことをあたりかまわず大声で話して笑った。話は風が吹き飛ばしてしまうから人に聞かれる心配はないのだ。警視庁の許可証をもって、正規の営業をやっているこの運転手も明らかに同志の一人らしい。

「これから日本橋へ出て丸の内を抜けよう。そして朝のうちに僕は東京をたつことにする。本部にはまだ手がはいらないんだね? 書類はみんな焼いてしまったろ?」青年は快活に語りつづけている。

私が須田町でタクシーを降りたときはもう夜はすっかり明けはなれていた。降りがけに青年は元気よく「さよなら、お互いに名前はきかんことにしましょう、あなたの袂にあるものは、ちっとも不正なものじゃありません。僕の小遣いですよ」と言った。

私は日本全国を震駭させつつある重大事件の巨魁が帝都の中央を悠然とタクシーで疾駆してゆく後影を見送りながら、何とも名状しがたい気持ちを抱いて、ぼんやりその場に立ちつくしていた。袂へ手を入れてみると小さいなめらかな紙片が指さきにふれた。取り出してみると、この二三ヶ月見たこともない十円紙幣が二枚あった。