Japanische Klassiker mit Furigana
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あるたんぼうきしゃのはなし
平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕
平林 初之輔
Lesen Sie 平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕 (あるたんぼうきしゃのはなし) von 平林 初之輔 (ひらばやしはつのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 113.247 Zeichen · 229 Bildschirme
と言いながら、片手で夫の袖をひいた。
被害者柴田の細君の様子は実に妙だった。彼女は非常にそわそわしていたが、それは夫が殺されたのを悲しむためというよりも、何か別の理由によるらしかった。なぜというと、彼女は夫の死体の方は最初にちょっと一瞥をくれただけで、それ以後はてんで見向きもしないで、ただもう一刻もはやくこの場を逃げだしたいというようなそぶりをしていたばかりか、実際、一度くるりとうしろを向いて家の中へはいりかけたのであった。むろん警官に注意されて、渋々あともどりしてその場に立っていたが、それからは、彼女の様子は余計にそわそわしているように見えた。
下田は、こうした他人の面倒を見ることが心からすきらしく、しじゅう、何かと、世話を焼いていた。その様子は隣人の不幸をいたむというよりも、むしろ、多勢の人の中で、立ち働く機会が降って湧いたのを喜んでいるという風だった。細君の方は、それとは正反対に、しじゅうふるえながら、ろくろく口もきけなかった。二人の子供――男の児は七つで女の児は五つだった――も起きてきて母親の両側にたって、その場に集まった人々をおとなしく見物していたが、母親が気を配って、死体は見せないようにしていた。