Japanische Klassiker mit Furigana
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ばいりせんせいぎょうじょうき
梅里先生行状記
吉川 英治
Lesen Sie 梅里先生行状記 (ばいりせんせいぎょうじょうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 209.260 Zeichen · 418 Bildschirme
「それに違いありません。……いやなんとも、きのうまでの自分は面目ない限りでござる。何事もどうかおゆるしを」
「いやいやおたがいがその人間でござる。一日のうちでも、朝には善性をあきらかにして、善人となりながら、午には紛れて悪事に眼を血ばしらせ、夕べにはまた煩悩を追いなど――一日のまにさえ一瞬一瞬、何十ぺんも、善となり悪となり、神となり魔となり、帰するところなく漂う心を身にかくしておるのがおたがい人間でござるよ。――さように卑下めさるな、卑下めさるな」
「ありがとう存じまする。貴殿すらそうかと思うと、何やら、ほっと助かったようなここちがしまする」
「なんの、それがしなど、まだ未熟未熟。ずいぶん心がけながら、一日のうちにはまだ幾度か、ふと心が萎え、あらぬ悪心を萌してみたり、煩悩に晦まされたり、そんな弱点の隙間を心にくりかえしておる。……ただ、悪心はきざしても、それが行動までに現れぬうち、心のそこで抑えつけ抑えつけいたしておるので――何やら善い人間のように観られておるが、どうしてこれでなかなか物騒な人間なのです」
「…………」
浮田甚兵衛のそばにいて、じっとさっきから介三郎の面を見ていた牟礼大八が、そのとき初めてことばを発した。