Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ばいりせんせいぎょうじょうき

梅里先生行状記

吉川 英治

Lesen Sie 梅里先生行状記 (ばいりせんせいぎょうじょうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 209.260 Zeichen · 418 Bildschirme

Aozora Bunko

九

「間にあえばいいが、間にあうまい。やがて吉保は宰相にものぼり天下を私するにちがいない」

「そうしたら、そうさせておけ。歴史をみろ、長くつづくわけはない」

「そんな世に一日たりと生きていたくはない。黙視しておれるものか」

「とにかく、いちど帰参したらどうだ。おれが帰るとき一しょに、……西山荘へ」

「ば、ばかな」

身をふるわすように、又四郎はつよくかぶりを振ったが、そのとき、二度目の物音が裏のほうで耳近く聞えた。――そこの破れ垣根からむこうは、稲荷の森だったが、さっきからその辺を、無数の蟇が這うようにうごいて来る人影があった。

十手を持ったもの、棒を持ったものなど、物々しい数だった。

九

「待て。……はてな?」

介三郎は手をあげた。又四郎の口を抑えるようにである。そして、行燈の灯色をじっと見つめていた。

又四郎の耳もそばだっていた――あきらかに、ただならぬ気配が、障子の外にまで迫っている。灯の気が、急に戦ぎ立つ。

「何者だっ!」

障子へ向って、膝を建て直すとたんに、かれは太刀を把って脇の下に持っていた。

介三郎もまた、さっと、うしろの壁腰まで身をひいて、刀の柄を無意識につかんだのである。