Japanische Klassiker mit Furigana
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ばいりせんせいぎょうじょうき
梅里先生行状記
吉川 英治
Lesen Sie 梅里先生行状記 (ばいりせんせいぎょうじょうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 209.260 Zeichen · 418 Bildschirme
二
――また、その前後から揉めておる将軍家のお世嗣についてもな」
「水戸のご隠居には、ご在職中から、甲府綱豊さまを擁し、あなたのご意中は、紀伊綱教さまにありました」
「そうだ、今とても。……将軍家のお心もまた」
「……ですが、ほんとのところは」
紋太夫は急にあたりを見まわし睫毛の濃いせいか、その眼は白眼がちに恐く見えた。
二
「ほんとのところとは?」
吉保も、要心ぶかい眼をちらと光らせた。奸智は奸智を知る。ふたりは共に、乱世の臣なら一方の奸雄たり得る敏才を持ちあっている。
紋太夫は、うごかさぬ程な唇から、にやりと囁いた。
「……打割ったお胸のなかを、敢て、臆測しますならば、あなた様が、将軍家のお世嗣として立てたいお方は――甲府どのでも、紀伊どのでもございますまい」
「では誰じゃというか」
「まだお八歳にしかおなりなさいませぬが、ご当家において、ご養育あそばされている、吉里君ではないかと」
「なに。なに」
これほどあわてた顔色をひとに見せたことがこの人にあるだろうか。それを紋太夫は、すこし身を低めにしながら、じっと、仰ぎ見ているのであった。
「ばかな。……めったなことをば」