Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ばいりせんせいぎょうじょうき

梅里先生行状記

吉川 英治

Lesen Sie 梅里先生行状記 (ばいりせんせいぎょうじょうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 209.260 Zeichen · 418 Bildschirme

Aozora Bunko

六

また、歩き出すのかと、かの女もすぐ起ちかけたが、そうではなかった。

寄って来て、肩を抱いた。

お次は、おののいて、

「ひとが来ます。……みっともない」

「来てもいい。ふたりはきれいだ、何でもない」

「……けれど、わたしの心は」

「人目を咎める?」

「ええ……何ですか、あの」

「お次さんは、わしが好きか、ほんとに好きか」

又四郎は怖い顔した。

かれが手を離すと、お次はかえって、すがりついた。

「……いけませんでしょうか」

「ばかっ。泣くな」

まるで突っ放しているいい方である。けれど、馬鹿といわれても、何をいわれても、女性はその中につつまれているものは知っている。お次は、かれの胸から顔を離さなかった。

「わしは、嫌いなんだ、大っ嫌いなんだ、泣くことが。――なぜならば、自分もすぐにつり込まれるから」

背をかろくたたいて、

「泣くのはよせ。しかし、ほんとうの話をしよう。こういう夜は二度ないだろう――。え、お次さん」

「…………」

「わしがどこのさむらいで、どなたにお仕え申して、また、なんの為に江戸へ来たか、何も知るまい。……が、それは順にはなそう」

「いいえ、知っています」

「知っている」