Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

ばいりせんせいぎょうじょうき

梅里先生行状記

吉川 英治

Lesen Sie 梅里先生行状記 (ばいりせんせいぎょうじょうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 209.260 Zeichen · 418 Bildschirme

Aozora Bunko

「頭や面はまだつけるに及ばぬ」

と、とどめて、

「時刻は」と、訊く。

なお余裕のある旨を答えると、さらばと起ち上がって一同を顧み、

「少々存ずる旨あれば、鏡の間より予が呼ぶまで、其方たちもここを出て随意に休息いたしておるように」

と、いった。

いい終るとすぐ光圀は隣の鏡の間へはいった。

ここは舞台と同じように拭きみがいた板敷である。一隅に装束をあらためる鏡がすえてある。橋がかりへ出る口には幕が垂れているし、角の奉行窓からかすかな明りはさしているが、塗籠のように仄暗い。そして一面の鏡だけが冷たい光をたたえている。

遠ざけられた人々も、静かに楽屋を出て行った。その人々のひそかに思うには――おそらくこの切能の春日龍神の後ジテをもって、生涯の舞いおさめと期しているらしい老公は――心ゆくまでそれを果すため、舞台へかかる前のしばらくの時間を、独り鏡の間にあって、芸に対する丹心と工夫を凝らしていたいのではあるまいか――そう当然のように察していたのである。

が、光圀は、そこにすえてある鬘桶に、ゆたりと、腰を掛けると間もなく、

「介三郎介三郎」

と、ふたたび呼びたて、

「下段の間には誰と誰とがおるか」