Japanische Klassiker mit Furigana
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いきふどう
橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇
橘 外男
Lesen Sie 橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇 (いきふどう) von 橘 外男 (たちばなそとお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 198.400 Zeichen · 387 Bildschirme
五郎丸がさっきから、坂の下をめがけてうなっていたところをみれば、もちろんあの長い坂を、のぼってきたにはちがいありませんが、あがるにもおりるにも、石ころだらけの坂道を、足音ひとつさせずに歩いてくるということは、けっしてできないはずなのです。
それを、この老婆は物音ひとつさせず、通り魔のごとくに、門のなかへはいりこんできたのですから、ふしぎというほかはありません。
しかも、老婆は、四方八方にけわしいまなざしをくばって、せなかの赤ン坊もわすれたように異様に底光りのする目で、にくにくしげに犬をにらみつけて、いまにも五郎丸におどりかからんばかりの、たけだけしいその形相は、これが人間の老婆かと、うたがわれんばかりです。
もうひとつふしぎなのは、この五郎丸という犬でした。これは小馬ほどもある土佐産の猛犬なのでしたが、ふだんから悧巧な性質で、むやみにほえるような犬ではなく、まして病人としてこの医院の門をくぐった人に、いままでただの一度もほえついたようなことはありません。
それが、この老婆だけは、狂気のごとくにほえたけっているのですから、何かこの老婆の正体が、ただならぬものに見えたのかもしれません。