Japanische Klassiker mit Furigana
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おうしゅうきこう
欧洲紀行
横光 利一
Lesen Sie 欧洲紀行 (おうしゅうきこう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 120.107 Zeichen · 241 Bildschirme
七月三十日
七月三十一日
これからヨーロッパに長くいようという人と、私のように無目的にぶらぶら遊びに来たものとは見方は自然に変るのであろう。
七月三十日
次回のオリンピックが日本と決定する。逢う日本人は互に顔を見合せた形だ。どことなく誰もがっかりしている。
「どうするものかね。」
と誰も彼もが云う。また喧嘩ばかりだろうと一人が云う。これから始まろうとするベルリンのオリンピックのことなど、今はどうでもよいという気持ちになって来る。
日本人の集る街の食事場もまた一種異様な興奮の仕方である。
「いよいよ来たね。」
「うむ。」
こういう会話の次には誰も黙って何も云わない。ヨーロッパ各国の視線が同時にこちらを向いたのだ。さて日本人はとわれわれは互に見合うのだが、このベルリンに匹敵する文化をどこから引き摺り出すのか、答えに詰った顔を撫で廻しているだけだ。脂汗でどの顔も赧黒く蒸せている。互に無茶苦茶に食欲を満すばかりだ。
七月三十一日
嵯峨善兵君がパリーから来る。夜、ツオウ駅まで出て行く。街はますます雑踏して来る。カフェーに坐っていると、ボーイはわれわれの卓の上に日の丸の旗を置くという始末だ。