Japanische Klassiker mit Furigana
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おうしゅうきこう
欧洲紀行
横光 利一
Lesen Sie 欧洲紀行 (おうしゅうきこう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 120.107 Zeichen · 241 Bildschirme
三月十五日
洋上句会第四回があった。俳句はだんだん下手くなって来た。定石を覚えて来ると下手くなるそうだ。昨日二千米の海中に、珊瑚島がぼつりと見える。ミニコイ島という。樹木一面に繁茂して白い鴎が群れている。
島栄ゆ鈴なる鴎白珊瑚
燈台がある。大海の中の燈台守の生活はむかしはわれわれに夢想的な思考力を与えたものだが、もう長い間あのような考えは忘れていた。蔵の中から土用干に取り出した古着を見る思いで何となくこの考えは懐しい。あれこれと想いをいじくってみるが、そっとむかしのままにしておく方が良さそうだ。無事に過せる考えは無事にしとくに限る。今に巴里へつけば私の今までの考えなど無事にはすむまい。
三月十五日
晴。一日毎に時計を二十分から五十分ずつ遅らせて来た。今日で日本より五時間ばかり、私の時計は遅れているだろう。
今日は一番海が暴れる。ときどき甲板へ波が上る。このくらいの事がないと航海は面白くなくなるものだ。アフリカから吹く風とアラビアから吹く風と打ち合っているから、波は三角で突き上る。
熱海の波あびて立つ鉢の松
食慾は旺盛だが足に硬直が来る。しかし、頭はだんだんリアリスティックに戻って来た。