Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
こはんていじけん
湖畔亭事件
江戸川 乱歩
Lesen Sie 湖畔亭事件 (こはんていじけん) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 69.335 Zeichen · 137 Bildschirme
「ほんとうですね。まるきり違った世界ですね」
私は調子を合せて答えました。しかし、私には、この事件の余りにもあっけない終局に、何となく腑に落ち兼ねる所がありました。例えば、死体焼却という様な世の常ならぬ想像に、それを裏書する火葬場の匂いがちゃんと用意されていたり、犯人が見つかったかと思うと、その時には彼はすでに死骸になっていたり、トランクの男の(少くともトランクそのものの)行方が絶対に分らなくなったり、考えれば考えるほど、異様な感じがします。もっと手近な事柄をいえば、今私の前に腰かけている河野自身の古ぼけた手提鞄で、その中には恐らく数冊の古本と、絵の道具と、幾枚かの着類が入れてあるに過ぎないその鞄を、彼はなぜなればあんなに大切相にしているのでしょう。一寸開くたび毎に、一々錠前を卸して、その鍵をポケットの中へ忍ばせるのでしょう。私は妙に河野の古鞄が気になりました。それに連れては、河野自身の態度までも、何とやら気掛りです。
従って、私の様子に幾らか変な所が見えたのでしょう。河野の方でも、何となく警戒的なそぶりを見せ初めました。そして、一層おかしいのは、非常に巧にさりげない風を装ってはいますけれど、私には彼の目が(というよりも彼の心そのものが)頭の上の網棚にのせた古鞄に、恐しい力で惹きつけられていることが分り