Japanische Klassiker mit Furigana
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こはんていじけん
湖畔亭事件
江戸川 乱歩
Lesen Sie 湖畔亭事件 (こはんていじけん) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 69.335 Zeichen · 137 Bildschirme
十八
「駄目でしたよ」
間もなく、木の枝をガサガサいわせて、窓の所に、河野の無事な姿が現れました。彼は部屋へ入ると、私の枕許に坐って、追跡の結果を報告するのでした。
「馬鹿に逃げ足の早い奴で、とうとう見失ってしまった。しかし、その代りにいいものを拾いましたよ。又一つ証拠品が手に入ったというものです」
十八
河野はそういいながら、さも大切そうに、懐の中から一個の品物を取り出しました。
「これですよ。この財布ですよ」
見ると、金金具のついた、可也上等の二つ折り紙入れです。それがかさ高くふくらんでいるのです。
「これが、あいつの逃げたあとに落ちていたのですよ。まっ暗で、曲者の風体なぞはよく見極められませんでしたが、この財布は丁度運よく、浴場の裏口から明りのさしている地面に、落ちていたものですから、気がついたのです。無論あいつが落したものに相違ありません」
そこで、私達は非常な好奇心を以て財布をあらためました。そして何気なくその中味を取り出して見た時、私達は更に一驚を吃しないではいられませんでした。そこには、予期した様な、名刺その他の所有主を示す様なものは何一つなく、紙幣ばかりが、それも手の切れそうな十円札で約五百円入っていたのです。