Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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こはんていじけん

湖畔亭事件

江戸川 乱歩

Lesen Sie 湖畔亭事件 (こはんていじけん) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 69.335 Zeichen · 137 Bildschirme

Aozora Bunko

二十三

トランクを下げた洋服男を見たものは、一人としてないのです。彼等はすでに遠くへ逃げのびたのでしょうか。それとも、まだこの山中のどこかに潜伏しているのでしょうか。先夜の怪しい人影などから想像しますと、或は潜伏している方が本当かも知れません。何かこう、えたいの知れぬ怖さです。どこかの隅に(ごく間近な所かも知れません)人殺しの極悪人がモゾモゾしているのです。

二十三

その夕方のことでした。私はふと思いついて、ふもとの町から蔦屋の〆治という芸者を呼びました。別段三味線の音が聞きたかった訳でも、〆治という女に興味を持った訳でもありませんが、女中などの話によると、彼女が死んだ長吉と一番の仲よしであったという所から、少し長吉の身状について尋ねて見ようと考えたのです。

「暫くでしたわね」

一度以前に呼んだことのあるのを覚えていて、年増芸者の〆治は、親げな笑顔で、無造作な口を利きました。私の目的にとっては、それが何よりの幸でした。

「三味線なんかそちらへかたづけて置いて、くつろいで、今日は御飯でもたべながら話そうじゃないか」

私は早速そんな風に切り出しました。それを聞くと〆治は一寸笑顔を引込ませて、不審らしい表情を浮かべましたが、やがて、およそ私の目的を察したらしく、今度は別種の笑顔になって、遠慮なくちゃぶ台の向う側に坐るのでし