Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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こはんていじけん

湖畔亭事件

江戸川 乱歩

Lesen Sie 湖畔亭事件 (こはんていじけん) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 69.335 Zeichen · 137 Bildschirme

Aozora Bunko

十七

十七

一時の放心を取戻すと、私はすぐ様浴場へかけつけました。しかし、そこには、前晩と同じ様に、何の気はいもないのです。殊に事件のために湯も立たず、人々は気味悪がって、そこへ近寄りもしませんので、脱衣場は一層物淋しく白々として見えました。そして、一寸見たのでは黒い板の間と区別がつかぬほどの、例の血痕ばかりがそれゆえに一層物凄く私の目を惹きつけるのでした。

暫く耳をすましていても、無論何の物音も聞えては来ません。家中がシーンと鎮まり返って、あの恐しい手首の持主の外には、恐らくは誰一人起きている者もないのです。そして、その男は、鏡の影を見てから大して時間もたっていないのですから、ひょっとしたら、まだその辺の隅に隠れていないとも限りません。それを考えると、私は無上に怖くなって、いきなり浴場を逃げ出したものであります。

しかし、部屋へ帰って見ても、どうしてじっとしていることが出来ましょう。といって、宿の人を起してこの事実を知らせるには、やっぱり覗き眼鏡の秘密を打ちあける外はなく、私は今更、何ゆえ取調べのあった時それをいってしまわなかったかと、少からず後悔しなければなりませんでした。