Japanische Klassiker mit Furigana
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こはんていじけん
湖畔亭事件
江戸川 乱歩
Lesen Sie 湖畔亭事件 (こはんていじけん) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 69.335 Zeichen · 137 Bildschirme
五
人前では、さも利口そうに緊張している表情が、一人切りになると、まるで弛緩してしまって、恐しいほど相好の変るものです。ある人は、生きた人間と死人ほどの、甚だしい相違を現します。表情ばかりではありません。姿勢にしろ、いろいろな仕草にしろ、すべて変ってしまいます。私は嘗つて、他人の前では非常な楽天家で、寧ろ狂的にまで快活な人が、その実は、彼が一人切りでいる時は、正反対の極端に陰気な、厭世家であったことを目撃しました。人間には多かれ少かれ、こうした所がある様に思われます。我々が見ている一人の人間は、実は彼の正体の反対のものである場合が屡々あるものです。この事実から推して行きますと、裸体の人間を、鏡の前に、たった一人で置いた時、彼が彼自身の裸体を、いかに取扱うかを見るのは、甚だ興味のある事柄ではないでしょうか。
そういう理由から、私は覗き眼鏡の一端を、浴場の中へではなく、その次ぎの間になっている、大きな姿見のある、脱衣場にとりつけようと、決心したものであります。
五
その日、夜の更けるのを待って、私は不思議な作業にとりかかりました。先ずトランクの底から覗き眼鏡の道具を取出しますと、入れこになったボール紙の筒を、長くつなぎ合せて、例の丸窓から屋根へ忍びいで、人目につかぬ場所を選んで、それを細い針金で結びつけるのでした