Japanische Klassiker mit Furigana
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こはんていじけん
湖畔亭事件
江戸川 乱歩
Lesen Sie 湖畔亭事件 (こはんていじけん) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 69.335 Zeichen · 137 Bildschirme
三十
事件が落着すると、私達は早速この気味悪い場所を引上げることにしました。事件以来一層親くなった河野とは、方向が同じだというので、一緒の汽車に乗りました。私はいうまでもなくT市まで、河野はそのずっと手前のIという駅で降りる予定でした。
二人は銘々相当大型の鞄を下げていました。私のは例の覗き眼鏡を秘めた角鞄、河野のは古ぼけた横に長い奴、服装は両人共和服でしたけれど、そうして湖畔亭を出発する光景が、何とやら彼のトランクの二人づれに似ている様に思われました。
「トランクの男はどうしたのでしょうね」
私はその聯想から思わず河野に話しかけました。
「さあ、どうしましたかね。偶然人目にかからないで、この村を出たという様なことではないでしょうか。いずれにしても、あの連中の詮議立てはもう必要がありませんね。今度の犯罪にはちっとも関係がない筈ですから」
そして、私達の上り列車は、思出多き湖畔の町を離れるのでした。
三十
「アア、やっと清々した。美しい景色じゃありませんか。あんな事件にかかわっている間、僕達はすっかりこういうものを忘れていましたね」
窓外を過ぎ行く初夏の景色を眺めながら、河野はさも伸々といいました。