Japanische Klassiker mit Furigana
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こはんていじけん
湖畔亭事件
江戸川 乱歩
Lesen Sie 湖畔亭事件 (こはんていじけん) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 69.335 Zeichen · 137 Bildschirme
十二
「ここは朝早く、掃除することになっていますから、血の跡があるにしても、ちょっと見た位では分らぬ様に、拭きとってあるかも知れません」そして、ふと気がついた様に「オヤ、これは変ですね。このマットはいつもこんな鏡の前にはなかったはずだが。これの正しい位置は、この浴場の入口にあるべきですね」
彼はそういいながら、足の先で、その棕櫚で作った幅の広いマットを、あるべき位置へおしやるのでした。
「ヤ、これは」
彼が妙な声を出したので、驚いてそこを見ますと、今までマットで隠れていた床板には、殆ど二尺四方程の広さで、ベットリと、ドス黒いしみがついているのです。それが血潮を拭きとった跡であることは、一目見ただけで十分察しられました。
十二
河野は袂からハンカチを出して、その血の跡らしきものを、ゴシゴシとこすって見ましたが、余程よく拭き取ってあると見え、ハンカチの先がほんのうっすりと赤くなるばかりでした。
「どうも血の様ですね。インキや絵の具の色とは違いますね」
そして、彼はなおもその辺を調べ廻っていましたが、
「これを御覧なさい」
といって指さす所を見ると、マットで隠れていた個所の外にも、諸所に点々として血の跡らしきものを認めることが出来ました。