Japanische Klassiker mit Furigana
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こはんていじけん
湖畔亭事件
江戸川 乱歩
Lesen Sie 湖畔亭事件 (こはんていじけん) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 69.335 Zeichen · 137 Bildschirme
今度も麓のY町に暫くいて、私の少し前に湖畔亭に来たということでした。そうして旅をしながら、彼は諸国の人情風俗を調べている様子で、様々の珍しい事柄を知っていました。旅の暇には、彼は提えている書物に読み耽るらしく、手垢で黒くなった四五冊のむずかしい書物が、いつも彼の座右にあるのでした。
いや、これでは少しお話が堅くなり過ぎた様です。河野の紹介はこれ位に止めて、さて彼がその朝私の部屋を訪ねた所へ立ち帰ることに致しましょう。
彼は私の部屋へ入って来ると、私の顔をジロジロ眺めて、
「どうかしましたか、大変顔色が悪い様ですが」
と聞くのです。
「昨夜眠れなかったものですから」
私は去りげなく答えました。
「不眠症ですか、いけませんね」
そして、私達は暫く、いつもの様な議論とも、世間話ともつかぬものを取交すのでした。が、やがて、私はそんな暢気な会話に耐え切れなくなりました。ともすれば、昨夜の事で頭が一ぱいになって、河野の物しり顔な議論など一向耳に這入らぬのです。そうしていらいらしている内に、私はふと「この男に話して彼の判断を聞いて見たら」と考えました。彼なれば相当私を理解もしていて呉るのですから、何となく話し易い気がするのです。