Japanische Klassiker mit Furigana
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こはんていじけん
湖畔亭事件
江戸川 乱歩
Lesen Sie 湖畔亭事件 (こはんていじけん) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 69.335 Zeichen · 137 Bildschirme
「君はちっとも気がつかなかったのかい、人殺しを」
「ヘエ、一向に」
「一昨日の晩、湯殿の中で何か物音でもしなかったのかい。焚場とは壁一重だし、中を覗ける様な隙間も拵えてある位だから、何か気がつきそうなものだね」
「ヘエ、ついうっかりしておりましたので」
三造はかかり合いになることを恐れるものの様に、きのうから何を問われても、一つとしてハッキリした返事をしないのです。思いなしか、私には彼が何事かをかくしている様にも見えます。
「君はいつもどこで寝ているの」
私はふとある事を思いついて、こんな風に問いかけて見ました。
「へえ、そこの焚き場の側の、三畳の部屋なんで」
彼が指さすのを見ますと、浴場の建物の裏側に、焚き場の石炭などを積み上げた薄暗い土間があって、その隣に障子も何もない、まるで乞食小屋の様な畳敷きの所が見えます。
「昨夜もあすこで寝たんだね」
「ヘエ」
「じゃ、夜なかの二時頃に何か変ったことはなかったかい。僕は妙な音がした様に思うのだが」
「ヘエ、別に」
「眼を覚さなかったの」
「ヘエ」
彼のいう所が本当だとすると、あの曲者追跡の騒ぎも、この愚者の夢を破らなかったと見えます。