Japanische Klassiker mit Furigana
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こはんていじけん
湖畔亭事件
江戸川 乱歩
Lesen Sie 湖畔亭事件 (こはんていじけん) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 69.335 Zeichen · 137 Bildschirme
永い時間でした。右往左往する懐中電燈の光をたよりに、私は根気よく男の行動を見守っていました。すると、いくら探しても目的の品物が見つからぬらしく、男はついにあきらめて、背を伸すと、いきなり懐中電燈を消して、ガサガサとどこかへ立去る気勢です。見失ってはならぬと、私はすぐ様彼のあとをつけ始めました。つけるといっても、暗闇のことで、僅に草を踏む跫音によって相手の処在を察する外はなく、それが今いうひどい風の音だものですから、なかなかうまく聞き取れず、怖さは怖し、物慣れぬ私にはどうしていいか分らないのです。そして、まごまごしている内に、幽な跫音も聞えぬ様になり、私は遂に、その闇の中へ、たった一人でとり残されてしまいました。
ここまで漕ぎつけて、相手をとり逃しては、折角の苦心が水の泡です。まさか森の奥へと、逃げ込んだ訳ではないでしょう。彼奴は私に見られたことなど少しも気づいていないのですから、きっと街道筋へ出るに相違ありません。そこへ気がつくと、私はやにわに、湖畔亭の前を通っている村道に駈つけました。
山里のことですから、宿の外には燈火の洩れる家とてもなく、まっくらな街道には、人影もありません。