Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
Lesen Sie 神州天馬侠 (しんしゅうてんまきょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 511.765 Zeichen · 1011 Bildschirme
旅の男というのは、鼻かけ卜斎の八風斎であった。越後路へむかっていくかれは、蛾次郎を見うしなって、ひとりとなり、昨夜はこの部落で、一夜をあかした。
「わざわざ恐れいりまする」
と、年かさな矢作が、卜斎のまえへ、小腰をかがめながら、ていねいにききだした。
「あなたさまは、裾野からおいでになった鏃師とやらだそうでござりますが、あのとおりな黒煙が、二日二晩もつづいて立ちのぼっているのは、いったいなんなのでござりましょう」
「あれかい」卜斎はくだらぬことに、呼びとめられたといわんばかりに、
「あれはたぶん、人穴の殿堂が焼けたのでしょう」
「へえ、人穴の殿堂と申しますると」
「野武士の立てこもっていた山城――和田呂宋兵衛、丹羽昌仙などというやつらが、ひさしく巣をつくっていたところだ。それもとうとう時節がきて、あのとおり、焼きはらわれたものだろう」
「ああ野武士ですか、野武士の城なら、いい気味だ」
「お富士さまの罰だ」
と、里人はにわかにほッと安心したばかりか、日ごろの欝憤をはらしたようにどよみ立った。
するとまた二、三の者が、
「あ、だれかきた」と叫びだした。
見ると鳥刺し姿の可児才蔵が、山路をこえてこの部落にはいってきたのだ。