Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
Lesen Sie 神州天馬侠 (しんしゅうてんまきょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 511.765 Zeichen · 1011 Bildschirme
「あ!」
とおどろいたような声が、泉の亭のなかからもれ、池に面した塗り骨の障子がスッと開いた。
その部屋から、なかば身をさしだして、音のした池の面をながめたのは、館の菊亭右大臣晴季公で、そのまえには、さっきの僧のひとりが対坐し、ふたりの僧は、末のほうにひかえているらしかった。
「なんじゃ……」
晴季は微笑をふくんで、波紋のなかにしずんでいく魚のかげを見ながら、
「緋鯉であったそうな……ごあんじなさるまい」
こういって、またピシャリと障子をしめてしまった。
ところが――そのわずかもわずか、ほんの目ばたきするあいだに、泉のふちに立っていた呂宋兵衛のすがたが忽然と消えてしまった。いや、消えてしまったのではない。水遁の秘法をもちいて、泉殿の橋をわたり、いつのまにか、晴季や僧たちのいる室のどこかに忍びこんでいたのだ。
とも知らず――晴季は、障子を閉めてほッとしたもののように、また小声で、目のまえにいる僧形の貴人へ話しかけていたことばをつづける。
「いや、なにごとも時世時節……こうおあきらめがかんじんじゃ。あのような水音にさえ、はッと心をおくお身の上、さだめしおつらかろうとお察し申すが、またいつか天運のお恵みもあろうでな。