Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
Lesen Sie 神州天馬侠 (しんしゅうてんまきょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 511.765 Zeichen · 1011 Bildschirme
「むッ……」と十郎太は、苦鳴をあげて、たおれた。
「若君――」
と寄りそってきた龍太郎、
「またの時節があります。もう、すこしも、ご猶予は危険です。さ、この城から逃げださねばなりませぬ」
「でも……龍太郎、ここまできて、家康を討ちもらしたのはざんねんだ。わしは無念だ」
「ごもっともです。しかし、伊那丸さまの大望は、ひろい天下にあるのではござりませぬか。家康ひとりは小さな敵です。さ、早く」
とせき立てたかれは、むりにかれの手をとって、築山から、城の土塀によじのぼり、狭間や、わずかな足がかりを力に、二丈あまりの石垣を、すべり落ちた。
途中に犬走りという中段がある。ふたりはそこまでおりて、ぴったりと石垣に腹をつけながら、しばらくあたりをうかがっていた。上では、城内の武士が声をからして、八ぽうへ手配りをさけびつつ、縄梯子を、石垣のそとへかけおろしてきた。南無三――とあなたを見れば、火の手を見た城下の旗本たちが、闇をついて、これまた城の大手へ刻々に殺到するけはいである。
「どうしたものだろう?」
さすがの龍太郎も、ここまできて、はたと当惑した。もう濠までわずかに五、六尺だが、そのさきは、満々とたたえた外濠、橋なくして、渡ることはとてもできない。