Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

Lesen Sie 神州天馬侠 (しんしゅうてんまきょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 511.765 Zeichen · 1011 Bildschirme

Aozora Bunko

浜松城の小姓組には、こんなきたない小僧はいない。

「だれだ、あいつは?」

「いつのまに、どこから降ってきおったのじゃ」

ぞろぞろと集まった。

そして、こんどは鷲よりも、この小僧に好奇の目をそそいだ。けれど、そこに黙然と立った鞍馬の竹童は、じぶんをとり巻いてジロジロと見る、小姓たちのあることなどは忘れはてて、

「オオ、おまえはクロじゃあないか」

と、心のそこから、いっぱいななつかしさを、無言に呼びかけているのである。――

ああ、ずいぶん久しぶりだったねえ――

そう思うと、竹童は、なんだかボッと顔が赤くなる気がした。かれの愛着とあこがれは、不意にめぐり会ったクロを見て、やさしく動悸を打っていた。

そこに動物と人との、なんのへだたりもなく、

「おまえを蛾次郎にぬすまれてから、おいらはどんなに諸国をさがし歩いていたろう。波のあらい北の海、吹雪のすさぶ橡ノ木峠、それから盲目になってまで、京都の空へ向かっても、おいらは、クロよ、クロよと呼んでいた。そのかいがあって、やっと、天ヶ丘で蛾次郎とうばい合いをしたかと思うと、おまえはまた、ふたりを琵琶湖へふりおとしたまま、どこかへ姿を消してしまった――さあ、それからも竹生島にいるあいだ、おいらは、朝となく夜となく、どれほど空を気にしていたか知れやしない……だがよかったなア、いいところ