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Japanische Klassiker mit Furigana

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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

Lesen Sie 神州天馬侠 (しんしゅうてんまきょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 511.765 Zeichen · 1011 Bildschirme

Aozora Bunko

するとどこかで、びゅうッ――という風のような音がした。だが、樺の梢はゆれてもいなかった。野呂川のひびきにしては一しゅんである。いや、それは天地をゆく音ではなく、高いところをかすめた音響にちがいなかった。

「なにかしら? ――」

咲耶子はいそいで林をかけぬけた。

陣馬の高原には、さまざまな植物の花が、露をふくんで黒々と眠っていた。ここに立てば、昼は東の真正面に富士の銀影や裾野の樹海がひと目にながめられ、西には信濃の山々、北には甲斐の盆地、笛吹川のうねり、村、町、城下の地点までかぞえられる。

「耳のせいであったか、それとも、やはりただの風か? ……」

見まわした空には、なにものの影も見あたらなかった。ただ、しずかに黙している、月はある、星はある。

ふたたび、狛笛の音が高くすんだ。そして咲耶子が、われとわが吹く音色にじぶんをすら忘れかけたころ、さらにすさまじい一陣の疾風が、月のふところをでて、小太郎山の真上をびゅうッ――と旋回しはじめた。

「オオ!」

咲耶子は、笛を唇からはなして、高く高くうちふった。

「――竹童ではないか! 鷲! 鷲! 竹童の鷲よ――」

おどり立つばかりに叫んだが、すぐにまた、笛を持ちなおして、息いッぱいに、空へ向かって高らかに吹く。