Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
Lesen Sie 神州天馬侠 (しんしゅうてんまきょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 511.765 Zeichen · 1011 Bildschirme
馬糧小屋の奇遇
一
蛾次郎にしてはくやしまぎれの不用意にでたことばであったかもしれないが、小文治はおどろいた。この甲府附近に、自分たちが入りこんでいることを、まんいち、躑躅ヶ崎支配の代官陣屋にでも密告されては、それこそ、三方にわかれて行動している伊那丸や党友の一大事。
はッと思うまに蛾次郎は、身をひるがえしてもとの道へはしりかけた。やっては! と小文治もいささかあわて気味に、地についていた朱柄の槍を片手のばしにかれの脾腹へ。
「わッ」と、蛾次郎の声であった。
腰車をつかれて横ざまに、ドウと、もんどり打って倒れている。そして芋虫のようにころがったまま、ふたたび起きあがろうともしないようす。
しかし、かれの肉にふれた朱柄の先は、穂のほうではなくて石突きであったから、突きのばした片手の力ぐらいで、そう苦もなく死んでしまうはずはないし、またよほど急所でもなければ、悶絶するのも少しおかしい。
見ると、なるほど。
乞う休んぜよ、である。ひっくりかえった蛾次郎は、ぽかんと眼をあいて、自分にいって聞かせている。
(大丈夫だ、大丈夫だ。死にゃアしない、生きているぞおれは、たしかに生きている。