Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
Lesen Sie 神州天馬侠 (しんしゅうてんまきょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 511.765 Zeichen · 1011 Bildschirme
白い霧がきたときは、その木の半分以上は、まさに雲表に立っている。
「血をみるなかれ」の誓文をやぶった科で、加賀見忍剣はその神刑の山毛欅の高い上にしばられていた。
足はわずかに木のこぶにささえ、からだは注連縄で巻かれたまま、礫のように木の幹へしばりつけられた。目はもちろん、白い布で、かくされていてかえってよいかも知れなかった。十数丈の樹上から目をひらけば、甲斐、秩父、上毛の平野、関八州、雲の上から見る気がして、目がくらむかもわからない。
が、忍剣である。快川和尚の三十棒で鍛えあげられたかれである。目をひらけば、絶景! と叫ぶだろう。それくらいな胆気はある、きっと、それくらいな胆はすわっている。
しかし、いくら大胆な忍剣でも、この深岳の霧にふかれて、二十一日間も飲まず食わずで、そのままそうしておられるであろうか。心は禅に入って、耐えるとしても、人間の肉体がもつだろうか。
大雨がふる日もある。暴風が幹をゆすぶる晩もある。雷鳴や雷気が山を裂くような場合もあるにちがいない。
ことに寒い! まだ麓のもみじは浅いが、このへんの冷気は、身にしみるほどではないか。
また、その山毛欅が枝をはっている下をのぞくと、気のちぢむような断崖だ。