Japanische Klassiker mit Furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡
野村 胡堂
Lesen Sie 銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡 (ぜにがたへいじとりものひかえ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 141.130 Zeichen · 288 Bildschirme
銭形平次捕物控
一
一
ガラッ八の八五郎が、両国の水茶屋朝野屋の様子を、三日つづけて見張っておりました。
「近頃変なのがウロウロして、何を仕掛けられるか気味が悪くてかなわないから御用のひまなとき、八五郎親分でもときどき覗かして下さいな――」
朝野屋の名物娘お秀が、人に反対や遠慮をさせたことのない、圧倒的な調子でこう平次に頼んで行ってからのことでした。
そのころお秀は二十六の年増盛り、啖呵がきれて、小股が締って、白粉が嫌いで、茶碗酒が好きで、両国きっての評判者。その親父の留助は、酒の好きなところだけが娘に似ているといった、店番に生れ付いたような、平凡そのものの六十男でした。
茶汲み女は三人、小体な暮しですが、銅壺に往来の人間の顔が映ろうという綺麗事に客を呼んで横網に貸家が三軒と、洒落た住宅まで建てる勢いだったのです。
九月のよく晴れた日の夕暮。
「あッ、お前さん、銭箱なんか覗いて、何をするんだい」
お秀は土間に飛び降りると、木綿物の袷に、赤い麻の葉の帯をしめた十七八の娘の袖を掴んでグイと引きました。
「何にもしませんよ」
極端に脅えて、おどおどする娘は、これも白粉っ気のない、不思議に清純な感じのする――お秀とは違った世界に住む種類の人間でした。