Japanische Klassiker mit Furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十二)狐の嫁入
野村 胡堂
Lesen Sie 銭形平次捕物控(十二)狐の嫁入 (ぜにがたへいじとりものひかえ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 139.230 Zeichen · 280 Bildschirme
銭形平次捕物控
一
一
「親分、変なことがあるんだが――」
ガラッ八の八五郎が、少し鼻の穴を脹らませて入って来ました。
「よくそんなに変なことに出っくわすんだね、俺なんか当り前のことで飽々しているよ。借りた金は返さなきゃならないし、時分どきになれば腹は減るし、遊んでばかりいると、女房は良い顔をしないし」
銭形の平次はそう言いながら、せっせと冬仕度の繕い物をしている恋女房のお静の方をチラリと見るのです。
まア――随分、といった顔をお静はあげましたが、また例の八五郎を遊ぶつもりの冗談と判ると、素知らぬ顔をして、縫物の針を動かしました。名残りの虻が障子に鳴って、赤蜻蛉の影が射しそうな縁側に、平次は無精らしく引っくり返って、板敷の冷えをなつかしんでいるある日の午後のことです。
「だが、こいつは変っていますよ親分」
「前触れはそれくらいにして、なんだいその変っているのは」
八五郎の物々しい調子に釣られて、平次もツイ起き直りました。
「今朝、湯島の天神様にお詣りをして、女坂の上から、ぼんやり下谷の方を眺めていると、ツイ二三十間先――家の数にして五六軒目の二階の縁側に出してある行灯が、辰刻半(九時)過ぎだというのに明々と灯が入っているじゃありませんか」