Japanische Klassiker mit Furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十二)狐の嫁入
野村 胡堂
Lesen Sie 銭形平次捕物控(十二)狐の嫁入 (ぜにがたへいじとりものひかえ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 139.230 Zeichen · 280 Bildschirme
「一つ見本があるといいが」
「一本だけ私がしまっておいたのを、念のために持って参りました。これでございます」
幸吉の差出したのを見ると、なるほど何の変哲もない白い半切と白い封筒で、本銀町浅田屋徳次郎殿と書いた文字も一向特色のないお帳面文字です。
「ところで、浅田屋には、この二三年の間に、変ったことがなかったのかな。――変な噂を聴いたようにも思うが――」
平次の強靱な記憶力は、日本橋本銀町の浅田屋――江戸長者番付の小結どころに坐る大店の騒動を忘れているはずもなかったのです。
「明けて一昨年の春、妙なことがございましたが」
浅田屋の身上を三分の一にしてしまった上、先の主人総兵衛と、番頭二人まで命を落したほどの大事件を平次に促されて、幸吉は筋を通さなければなりませんでした。
諸大名の御金御用達を勤めて、江戸で五本の指に折られる大分限の浅田屋に、思いも寄らぬ災難が見舞いました。それは、日頃御出入りの大名、――飛騨高山の城主、三万八千石金森出雲守様の御宝物、御祖先が太閤様から拝領して、千利休の掛け物まで添えてある、曙井戸の茶碗に、近頃小さいながら傷が見えたので、お茶人の浅田屋総兵衛がお預かりして懇意な窯元へ修繕に廻すはずだったのが、浅田屋の土蔵の中で、いつの間にやら紛失してしまったのです。