Japanische Klassiker mit Furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控 猿回し
野村 胡堂
Lesen Sie 銭形平次捕物控 猿回し (ぜにがたへいじとりものひかえ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 125.671 Zeichen · 252 Bildschirme
時刻は丁度酉刻(六時)、それからの村越家は、家の者の気組が滅入るせいか、お通夜のように淋しくなるのを、八五郎の陽気さでも、救いようはありません。
昼前に物置から母屋に移された、下男の勇太郎の死骸は、検視が済むのを待ち兼ねて、明るいうちに目黒から駆けつけた、親兄弟が引取って帰り、此処にはもう、淋しいものは何んにも無い筈ですが、家中の者はお互いに顔を見合せないようにし、顔を合せても滅多に口をきかないようにして、ひたすら時の経つのを待って居る様子でした。
その間に、風呂場の方は、主人夫婦から順序通り入って、亥刻前には最後の宗之助が入ることになりました。それまで、風邪を引いたことにして、階下の六畳に頑張って居た八五郎は、親分の平次に言いつけられた通り、床の中から抜け出すと、
「もう風邪も抜けたようだから、一と風呂入るとしようか」
などと、家中に触れるように、風呂場に近ずくと、声も掛けずに、入口の戸をガラリと開けたのです。
中には小僧の宗之助が入って、念入に洗って居た筈ですが、あまりの不意の出来事に風呂場の狭い流しにハッと立上って、暫くは、次の動作に移る考えも浮ばず、ぼんやり湯気の中に闖入して来た八五郎を眺めて居りましたが、次の瞬間、何を考えたか、立上って柱の上の手燭を、手を挙げてパッと吹き落してしまったのです。