Japanische Klassiker mit Furigana
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かんかんむしはうたう
かんかん虫は唄う
吉川 英治
Lesen Sie かんかん虫は唄う (かんかんむしはうたう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 91.006 Zeichen · 182 Bildschirme
「アハハ、アハハハ」
紙くずだらけな空地の闇を、トム公が不きげんな顔をして歩いていると、忍び足に、後から尾いて来た大勢の影が、誰かがクスリと吹き出したのを機ッかけに、いちどに笑い出した。
「誰だい」
トム公はふり顧って、
「何を笑やあがるんだ」
「プリンス」
隠れていた人影は、いちどに集まって、彼をかこんだ、臙脂組のハンケチ女の群だった。
「プリンス、おまえは色気があるんだね、吃驚しちゃったわ」
「どうして、隅におけるもんかね」
「いいよ、いいよ。色気があるなら、私たちにも、覚悟があるからね」
「あ、勘弁できないわ」
「清純なユダ、公園へおいで」
「童貞の洗礼をしてあげる」
と、大勢して、手を引ッぱった。
トム公は、驚きはしないけれど、何のことだか、彼女たちが揶揄する意味がわからなかった。
「何さ、うるさいな」
「わたし達は、うるさいの」
ひとりが、トム公のからだを抓った。
「――そして、雛妓さんなら、うるさくないのだろう」
「なにッてやがんでい」
トム公は、赤くなった。
「悪いことはできないねえ、みんなして、見ていたんだから」
「あれは、おれの妹だもの」
「うそ、おつき」
ひとりが、帽子を攫って、空へ投げあげた。