Japanische Klassiker mit Furigana
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おおおかえちぜん
大岡越前
吉川 英治
Lesen Sie 大岡越前 (おおおかえちぜん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 218.436 Zeichen · 437 Bildschirme
――そこで、もひとつ、訊きたいがなあ」
「なんです、左右太さま。……じいっと、ひとの顔を見たりして」
「どうも、いつものお次さんとは見えないもの。何か内輪事の、心配でも起ったのか。……え、お次さん。それとも、どこか気分でも」
左右太は、そっと、かの女の肩を抱いていった。その肩も、おくれ毛も、すぐ泣きふるえ、訊ねられた二つのうちのどっちかに、触れたことは確かである。
「わ、わたくし……。もう、あなたとは」
「えっ、何。……あなたとは? ……どうしたって」
「左右太さま」と、いきなり彼の胸へ、しがみつくように、泣き顔を押しあてて、
「……あ、あなたと、交わしたお約束は、どうか、水に流してくださいませ。お次はもう左右太さまとは、夫婦になれない身になりました」
「な、なにをいうか」
と、左右太も、気色ばんで、ぎゅっと、お次の肩の両方を、わしづかみにして、その泣き顔を、揺すぶった。
「わけをいえ。泣くのが、いい訳ではあるまい。わけに依っては、どこへでも、好きな所へ、嫁にゆけ」
「ほかへ、お嫁になんか、行くので泣いているのではありません」
「では。……どうした仔細だ」
「ね、姉さんが……。