Japanische Klassiker mit Furigana
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おおおかえちぜん
大岡越前
吉川 英治
Lesen Sie 大岡越前 (おおおかえちぜん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 218.436 Zeichen · 437 Bildschirme
そして、この獰猛なお犬様に、雑鬧の露ばらいをさせて、人々が恐れまわるのを、愉快としていた。
かれが、芝居を見物中は、これを小屋の木戸番へ預けて入る。木戸番は、お犬様のために、特に、入口に別席をもうけ、地上に緋氈を敷いて、青竹につないでおいた。
すると、ある日、賎しからぬ若衆が、その前に佇んだ。そしてふと足の先で、お犬様を愛撫した。権門の猛犬は、常に人間を猫、鼠以下に見馴れているせいか、この人間の無礼にたいし、土佐犬特有の牙をいからして、猛然と、その若衆の出した足くびへ食いついた。――あッと、見ていた群集の方が胆をひやした。さだめし、足を引くのも間にあうまいと思ったからだ。ところが、豪胆といおうか、大気といおうか、若衆は、刹那に、わが足のつま先を以て剣の如くにし、引くべきを反対に、いきなり土佐犬の口の中へ――腹まで通れとばかり強く突ッ込んだのであった。
さしもの猛犬も、これには牙を立ついとまもなかったとみえ、ぐわッと五臓を吐くような唸きと共にぶっ仆れ、死ぬまでには至らなかったが、けたたましい吠え声をたてて、まったく尻ッ尾を垂れてしまった。
犬の声よりも、見ていた群集の歓声が、小屋の前を揺すったのである。