Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠5
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠5 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.120 Zeichen · 516 Bildschirme
兵馬の言葉が濁って、その様子が萎れるのを見たお君の面色に不安があります。
「残念ながら、もはや、この御縁はお諦めなさるよりほかはござらぬ」
と言いながら兵馬は、懐中から袋入りの物と帛紗包みとを取り出して、
「これが、能登守殿より御身へお言葉の代り」
その品をお君の眼の前へ置きました。その袋入りの物は短刀であり、帛紗包みは金子であることが一目見てわかります。
「わたくしは、そのようなものをいただきに上ったのではござりませぬ」
お君が恨めしそうにその二品をながめていましたが、その眼には涙がいっぱいであります。
「ともかくも」
と言って兵馬は、その二品を前へ出したきりで腕を組んでいました。兵馬の胸にも実は、思い余ることがあるのであります。
「宇津木様、どうぞ殿様のお言葉をお聞かせ下さりませ、縁を諦めよと、それが殿様のお言葉でござりましたか」
「能登守殿は、そうはおっしゃらぬ。そうはおっしゃらぬけれど」
「わたくしが殿様から前のようなお情けをいただきたいために、こうして恥を忍んで上りましたものか、どうか、それを御存じないあなた様が恨めしい」
「それは拙者にもわかっているし、能登守殿も御諒解であるが……」